なぜ関税交渉が進まないのか──アメリカの戦略と日本の誤解

 

「ボタンのかけ違い」交渉がこじれる本当の理由

 

アドラーは「すべての悩みは対人関係である」と言ったが、まさにその通り。人間関係がこじれると、問題の本質が見えなくなってしまう。

 

カップルなら別れれば済むが、外交はそうはいかない。日本の関税交渉では「なめられてたまるか」と強気な石破首相の発言に加え、小野寺政調会長まで「トランプ、ひどい人です」と感情的に語り出す始末。共感はしないが、気持ちは少し分かる。今まで築いてきた関係を無視するような扱いを受ければ、誰だって怒る。

 

けれど、ここで大切なのは感情ではなく「戦略」だ。脳力開発の城野宏氏ならこう考えるはず。

 

(1) **日本の戦略を決める**

アメリカの軍事力を最大限に活かし、日本の国土・国民・資源を守る。それが国家戦略。

アメリカと喧嘩はしていけないのである。

 

(2) **情報収集を徹底する**

関税の裏にあるアメリカの真意とは何か?何に悩み、どんなビジョンを描いているのか。幅広い角度で徹底的に探る。

実はアメリカウクライナ戦争で負けがほぼ確定してる。砲弾も援助物資も足りなかった。対してロシアは中国の支援もあり、継続的に戦争ができる状態。アメリカのGDPは見せかけばかりで製造業がないことに危機感を抱いた。

また、トランプの支持基盤は「ラストベルト」と言われる内陸の元製造業の町。今は貧困、薬物、暴力に苦しんでいる地域をなんとかしたいと思っている。

 

(3) **人間的側面を観察する**

指導者の性格や行動特性を読む。自ら先頭に立つか、慎重派か?家族構成、趣味、交友関係、そして弱点は?

石破政権の欠点はここ。安倍元首相はヒラリーが負けるとわかると、すぐにイバンカに会いに行った。メラニア婦人からの後押しもあり、トランプ大統領との交友も深めた。「シンゾー」「シンゾー」とトランプ大統領と親しくなり、気がつけば各国大統領とトランプ大統領の橋渡しになった。

 

(4) **戦術を練る**

戦略を達成するために多様な手段を繊細に準備する。たとえば、安倍元首相の妻・昭恵さんを通じて仲介する。娘のイバンカ氏と交流を深める。相手の望みを見極めて叶える努力をする。安全保障が問題なのだから、国防予算GDP比3.5%、5.0%は受け入れる。旧型のミサイルを購入するのではなく(1)戦略である日本の国土・国民・資源を守る空母、原子力潜水艦をレンタルする。

 

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### まとめ

 

今回の関税交渉が失敗している理由は、日本が貿易問題だと捉えているのに対し、アメリカは「安全保障」の文脈で動いているからだ。

 

ウクライナ戦争で西側諸国は、備えはあったもののロシアに勝てなかった。その反省から、アメリカは今、自国内で鉄も車も船も作れる体制を整えようとしている。中国依存からの脱却が急務だ。

 

そこを理解せず、日本が経済の話ばかりしていれば、「後回し」にされるのも当然だろう。相手の関心や置かれた状況、性格を読み解くことが交渉の基本だ。

 

今回の外交の失敗は、(1)戦略の不在、(3)相手の人物像の軽視──この2点に集約される。

城野宏氏が天国で苦笑しているかもしれない。

 

いま日本に必要なのは、まず“戦略”を立てることだ。それがなければ、発言のズレにも本人たちは気づかず、ボタンのかけ違いが続くだけだ。